ライフスタイル

未利用資源からサステナブルな商品を生み出す。ファーメンステーション酒井里奈さん

2019. Jan. 26

BY seta

毎日使っているシャンプーや化粧水、ちょっと裏返してみてください。その成分表示には、「エタノール」と書かれていませんか?よくよく見ればアレにも、コレにも!驚くほどに私たちの生活と密接に関わっている「エタノール」。ですが、その存在や出どころを意識したことがあるという人はそう多くはないのではないでしょうか。

「エタノールにも選択肢があっていい」そう話すのは、株式会社ファーメンステーション代表・酒井里奈さんです。

岩手県奥州市にある休耕田を活用して作ったお米から、独自の発酵技術で世界的にも珍しいお米由来のエタノールを製造。その過程で出るすべてを無駄なく活用し、化粧品やアロマ製品、養鶏や肥料などさまざまな用途への活用を手がけています。

そんな酒井さんが発酵技術を学び始めたのは、実は30代から。もともと文系で金融機関にお勤めだったという経歴を持つ酒井さんが切り開いてきた「自分だけの仕事」や目指す世界、そして発酵から広がっていく魅力溢れる製品について前後編でご紹介していきます。

【酒井里奈(さかい りな)さんのプロフィール】
国際基督教大学(ICU)卒業。富士銀行(現みずほ銀行)、ドイツ証券などに勤務。発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学、09年3月卒業。同年、株式会社ファーメンステーション設立。研究テーマは地産地消型バイオエタノール製造、未利用資源の有効活用技術の開発。好きな微生物は、麹菌。好きな発酵飲料は、ビール。東京都出身。

10年間の金融機関勤務を経て農業大学へ。30代での転身と起業までの道のりとは?

エタノールの製造と聞くとものすごく理系のイメージがありますが、酒井さんはもともと文系のご出身なんですね。

酒井さん 『はい。大学はICU(国際基督教大学)というところに行っていたのですが、変わった人が多い学校でした。自分を持っていて、人に惑わされずにやりたいことを貫いてやっていくという人ばかりで。そういう中で私はまだ周りの人のようにやりたいことがはっきりしていないな、という悩みがあったんです。そんな時、銀行に勤めている先輩リクルーターから「銀行はとにかく色んなものを見られるよ」と薦められて、新卒で銀行に入りました』

銀行に入り、発酵に出会うまではどんなお仕事を?

酒井さん 『銀行での仕事はすごく楽しかったですね。支店に勤務したあと国際交流基金というところに出向したのですが、ちょうどNPO法案ができた年で日本とアメリカのNPOを支援することになりました。そこで社会問題を解決するために汗を流す人たちとの出会いがあって、彼らのような活動に興味を持ったんです。 でも、社会問題に取り組んでいくならもっとビジネスがわかる人になった方がいいよとみんなに言われて、その通りだなとすぐには転職しませんでした。銀行に戻ってプロジェクトファイナンスという海外の大きな事業に融資するような仕事も経験したあと、ベンチャーや外資の証券会社でも働いて、10年間はずっと金融業界にいたんです』

金融業界から発酵の世界へ、その転機とは?

酒井さん 『仕事はずっと楽しかったのですが、「誰のものでもない、自分の仕事をしたい」と思い続けていました。それに、朝から晩まで働いて体調的にもまいっていた時期でもあって。忙しさで一番気が滅入っていた時に、ボストンとニューヨークへ出張したんです。食欲も落ち込んでいるような時期でしたが、レストランやルームサービスの食事を注文すると絶対に食べきれないような量の食べ物が出てくるんですね。それでたくさんの食べ物を捨てることになり、これは本当に嫌だなぁと。もともと環境問題にも関心があってゴミってどうにかならないかなっていうのはずっと思っていたのですが、タイミングとしてもそれを強く感じました』

『その出張から帰国してすぐに見たテレビ番組で、偶然にも「生ゴミをバイオ燃料にする」という内容が放送されていたんです。東京農業大学の取り組みでした。生ゴミをエネルギーにできる、しかも手法は日本酒を作るのと同じ「発酵」だから、どうやら技術的にはそう難しくないらしいと。これなら勉強すれば私にもなんとかできるんじゃないの?と思って、会社を辞めて東京農大に入り直したのが31才の時でした。実際にはすごく大変で、全然簡単なことではなかったんですけど(笑)』

二度目の大学生活、そして起業について。

酒井さん 『もともと文系なので生物とか化学とかはわからなくて、入学前からビデオ教材を使って勉強したり…とても苦労しました。農大にはしっかり4年間通い未利用資源をエタノールにする技術を学んだのですが、学生って時間があるので、その間に環境コンサルでも働いていました。ずーっとゴミの問題をやりたい!と思い続けていたのですが、あるとき岩手県の奥州市が農大に連絡をしてきて「米が余っています。バイオ燃料にしたいので協力してくれませんか?」というんです。ゴミではないけれど未利用の資源ですから、これだ!と思って、プロジェクトに加わりました』


酒井さん :『ラボでの研究を経て現地でお米からエタノールを製造する実証実験を行うことになり、2010年から2013年まで参加しました。休耕田を利用して非食用の米を育て、最初は燃料用としてエタノールを作りましたが、燃料では採算が合わないということがわかったんです。そこで、高付加価値で販売できる化粧品の原料として活用を始め、起業してその事業ごと引き受けることにしました。起業をして大変なことやプレッシャーもありますが、会社員だったらもっと良かったのになということは今はひとつも思いつかないです。すべてが楽しいし、自分の人生を生きている感じがしますね

お子さんもいらっしゃるそうですが、ご家庭とお仕事との両立は大変では?

酒井さん 『農大に入った年に1人目を産んで、2人目は岩手県で実証実験をしている最中、東日本大震災があった年に出産しています。学生出産は、会社員としての出産よりもおそらく楽だと思いますね。自分で決めて時間の融通を利かせられますし。特に岩手は東京よりもゆったりとしていて、農家さんと一緒に過ごすことも多いので子供も一緒に出張したりしていますよ。今も週に1度は岩手のラボにいきますが、帰宅が遅くなってしまう日はご近所のお友達に助けてもらったりも。仕事に関してもそうなのですが、ありとあらゆる人に「助けて!」っていうのがものすごく得意なんです。いろんな人にいっぱい助けてもらって知恵をもらって今がある、という感じですね』

ファーメンステーションが目指すこと

ファーメンステーションという社名の由来について教えてください。

酒井さん 『ファーメンステーションはfermentation(発酵)とstation(駅)を合わせて作った「発酵の駅」という意味合いの造語です。私たち自身が「駅」となって、「発酵」を通じてさまざまな未利用資源を変身させて世の中に繋いでいくという思いがあります』

会社として目指していることは?

酒井さん 『ファーメンステーションのミッションは、英語だと「Fermenting a Renewable Society(発酵させて循環型社会を作る)。日本語ではもう少しライトに言っていて、「発酵で楽しい社会を!」です。「発酵」と聞くと多くの人が味噌や醤油などの食品を思い浮かべると思いますが、実はとても幅広い分野で使われている技術です。その発酵技術を使って、使われていない未利用資源を「付加価値のある素敵なもの」へと変えていくプラットフォームになりたいんです。特にこだわっているのは、その出口となるものを「一般の人の目に見えるもの」にするということ。例えば、大量の使われていないものを燃やしてエネルギーに変えています!というのもそれはそれで素晴らしいことですが、多くの人にはきっと実感としてわからないと思います。それを、誰もが「手に取れるもの」に変えていくことが私たちは得意なんです』

強い信念を芯に持ちながら、明るく軽やかに自分の人生を生きる酒井さん。人を巻き込むことが得意で、そのフィールドをどんどん広げながら目標を現実に変えていきます。続く後編では、ファーメンステーションが発酵技術から生み広げる魅惑のプロダクト、そしてどこまでも繋がっていく発酵の可能性についてご紹介します。

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